売値の算出方法/土地評価額の5つの調べ方
2024年05月28日
同じ土地にも5つの価格がつけられます。
土地を評価する目的によって、価値の算出評価方法が5週類あるためです。
そこで今回は、土地の5つの評価に関する基礎知識を解説すると共に、土地を売却する際に、目安となる売値の計算方法を分かりやすく説明していきます。
||土地評価額の種類||
土地の価格は、実際の取引価格である「実勢価格」の他に、「公示価格」「固定資産税評価額」「相続税評価額」といった公的期間が公表する土地価格があります。
1.公示価格(公示地価と基準地価)
公示価格(地価公示価格)は、国が調査し公表をする「公示地価」と、都道府県が調査し公表をする「基準地価」に分けられます。
公示地価は、一般的な土地取引の指標として、国土交通省土地鑑定委員会が公表する土地の評価額のことです。公共事業用地を取得する上での価格算定の基準や、後ほどお伝えする固定資産税評価や相続税評価の基準になることがあります。
ちなみに、公示地価が公表される土地のことを「標準値」と言います。
メリットは、毎年同じ標準値の価格が公示されるため、地価変動が分かりやすいことです。
一方、基準地価は、各都道府県が毎年9月下旬に公表する、基準値のその年の7月1日時点の評価額のことです。公示地価と同じで、適正な土地価格の形成と、国の調査である公示地価を補完する役割があります。
2.実勢価格
実勢価格とは、「土地価格」とも呼ばれ、市場価格とほぼ同じです。
実勢価格は公示価格と同じく、国土交通省が運営の「土地総合情報システム」で調べることができます。
実勢価格も、公示価格と同じく土地の売買をする際に目安として活用ができます。
3.固定資産税評価額
土地にかかる固定資産税や、都市計画税、不動産取得税、登録免許税を算出するために用いる評価額のことです。
この評価額にそれぞれ適用される税率をかけた数値が、実際に支払う税額になります。
4.相続税評価額
相続税や贈与税を計算するために用いる基準価格です。
その評価方法は国税庁が通達する「財産評価基本通達」により、「路線価方式」「倍率方式」の2種類と定められており、土地がある地域により異なります。
(1)市街地については「路線価方式」により計算
路線価方式とは、宅地が面している道路一本ごとに設定されている路線価(土地の面積1平米あたりの価格)に対して、土地面積である地積やその他の要素を掛け合わせることで、相続税評価額を算出する方法です。
路線価は公示地価の約8割程度に設定されています。
※詳しい計算方法は後述します
(2)郊外など、路線価の設定がされていない土地は「倍率方式」により計算
固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算する方法です。倍率は国税庁が地域ごとに設定し公表しています。例えば評価倍率が1.1倍の場合は、固定資産税評価額に1.1倍をかけた額が相続税評価額となります。
||土地評価額を用いて売値を計算する方法||
5つの土地の評価額の全体像が見えてきましたでしょうか。
ここからは、不動産会社が土地売却の相談を受けた際、どのようにして売値を計算しているかを解説します。
今回は、土地評価額の中でも使用頻度の高い、相続税評価を用いる方法をご紹介します。
1.路線価を調べる
まずは、国税庁の公表している「路線価図・評価倍率表」から、土地の路線価を確認します。調べたいエリアの路線価図を見て、土地の前面道路に記録されている路線価を確認します。
路線価は「900B」「300D」などと、数字とアルファベットの組み合わせで記載があります。場合によっては「○」などの図形で囲まれています。
1平米あたりの価格を千円単位で表しています。(例:900Bなら、1平米あたりの路線価は900,000円となります)
※アルファベットについて
土地を第三者に貸していて、借地権が発生している場合の計算方法です。
土地を貸している場合、所有者がその土地を自由に利用できないため、借地権割合の分だけ、評価額を割引ます。(例:借地権割合がB(80%)と記載されている路線の土地で借地権が発生している場合、底地の所有者の相続税評価額は、借地権割合80%を差し引いた20%で計算します)
※図形について
その路線が属する地区区分を示します。
ビル街地区や高度商業地区など、種類があり、その地区に応じて奥行価格補正率が変化します。奥行き価格補正率とは、土地の形状に関連する減額補正です。
例えば、同じ敷地面積でも、間口が狭かったり奥行き距離が長いなど、形状が不整形な場合、利用価値が低くなるのです。
「900B」かつ「借地権なし」「普通住宅地区で奥行距離が5m」の土地があった場合、その土地の1㎡あたりの路線価は以下の通りとなります。
900,000円×奥行価格補正率92%=828,000円
2.相続税評価額を算出する
路線価について学んだ後は、路線価に地積と自らの持分割合をかけ合わせます。
持分割合とは、その土地を誰かと共有している場合の割合のことです。
例えば先ほど算出した路線価828,000円の100㎡の土地を、単独で所有していた場合、相続税評価額は以下の通りとなります。
828,000円×地積100㎡×持分割合100%=82,800,000円
3.相続税評価額を市場価格に近づける
相続税評価額の元となる路線価は、公示地価の約8割程度に設定されています。
そのことから、実際の取引価格である市場価格に近づけるためには、割り増しする必要があります。
路線価から市場価格を出す計算式は以下のものを用いるのが一般的です。
路線価評価÷0.8×1.1~1.2(110%~120%)
まず、「路線価評価÷0.8」で公示価格の目安を出します。
公示価格は一般的な土地取引の指標で、実際の取引では交渉などその他の要素が絡むことから、より割り増しするために1,1~1.2倍します。
先ほどの82,800,000円の相続税評価の土地を当てはめると、市場価格の目安は以下の通りとなります。
82,800,000円÷0.8×(1.1~1.2)=約1億1385万円~1億2420万円
||実際の売買価格に違いが出る理由||
上記のように、市場価格の目安を、路線価から簡単に算出することができました。
ですが、実際の売却価格とは格差が出る場合も多いです。査定額と、売却価格に違いが出る理由を3つの注意点として解説します。
1.査定業者の経験や実績、得意分野があるため
査定を行うのは、不動産の売却活動を行う担当者です。各不動産会社によって、エリアや専門分野などの得意分野が異なります。
2.査定額と評価額の算出方法が異なるため
不動産の査定は、評価額と異なる方法で行われます。
土地に使われるのは、「取引事例比較法」という、過去の取引事例から似た条件の物件価格を参考にする方法です。
また、投資用物件の場合、その家屋や土地から入る家賃収入など、将来生み出されるであろう収益を現在価値に換算する「収益還元法」も使用します。
どちらとも、路線価の算出方法とは異なるため、価格にもは差異が出る場合があります。
3.市場により変動しやすいため
例えば経済危機による不況や、地震などの災害が起こった場合は、査定額と売買価格は乖離する可能性が高いです。
また、売主が何らかの理由で一刻も早く売却したい場合は、売買価格が低く設定されることも多いでしょう。
このように、実勢価格兄は、査定では加味されない事情が多く影響する場合があります。
いかがでしたか。
今回は、土地に関わる5つの価格について解説しました。
実際の取引価格である実勢価格は、様々な理由から算出額と異なるケースがあります。
土地の評価は不動産会社によっても異なることから、自分の目的を得意としている会社に査定依頼をしてみるのが良いでしょう。