相続トラブルが起きる5つの要因と対処法

2024年07月20日

遺産相続に関するトラブルでお悩みの方もいると思います。

 

それまで良好だった関係も、相続の話になった途端に険悪な状態になってしまい、結果的に絶縁までしてしまう、ということも度々聞くケースです。

 

今回の記事では、よくある相続トラブルとその対処法を紹介し、どのように解決していけば良いのかをお伝えします。

 

 

家族や親族の争いごとは、関係性が近いこともあり、一度揉めるとなかなか解決しにくく、精神的にも負担が大きくなります。

 

できる限り深刻化しないように、こちらの記事がトラブル解決の糸口になり、納得できる相続ができて心穏やかに過ごす第一歩になれば幸いです。

 

 

 

 

||現在の相続トラブルについて||

 

 

お金持ちの家庭だけに起こると考えられがちですが、現実的には相続財産が5000万円以下の家庭で相続トラブルが多く起きており、全体の75%を占めています。

 

富裕層で多いのは相続税に関するトラブルが多く、相続財産が5000万円以下の家庭では、遺産分割の金額や割合で遺族同士が争うケースが増えています。

 

 

 

 

||相続トラブルを起こす原因5つ||

 

どのようなことが原因で、相続トラブルが起きるのでしょうか。

 

 

 

1.相続財産の内容が不透明

 

相続人同士が「隠している財産はないか」とお互いに疑いはじめ、トラブルに発展してしまう可能性があります。

 

被相続人が存命のうちに、下記のような資産目録を作成しておくと、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

 

・土地

・銀行預金

・株などの有価証券

・住宅ローン

・生命保険

・自動車

・貴金属類

 

 

 

2.遺言書の内容が不公平

 

遺言書がないためにトラブルに発展することはよくありますが、遺言書があっても、その内容があまりに公平さを欠く場合は、トラブルの原因となります。

 

遺産は遺言書の記載通りに分けるのが原則ですが、相続人全員の合意があれば、相続人の話し合いのもと分割することが可能です。

 

 

 

3.遺言が不動産のみ

 

現金や預貯金のように簡単に分割ができないため、相続人の間で不公平が生じやすく、争いごとに発展することがあります。

 

 

 

4.相続人同士の関係性が希薄

 

全員の合意を得にくいケースがあります。

代襲相続の場合、相続の話し合いの場が初対面になることがあります。

 

 

 

5.介護など寄与分の有無

 

兄弟姉妹の誰かや、その配偶者が被相続人と同居して介護などをしていた場合、寄与分をめぐって争うケースが多くなります。

 

 

 

 

 

||よくある相続トラブルと対処法6点||

 

よくある相続に関するトラブルとその対処法について詳しく解説します。

 

 

 

1.遺言に関するトラブル

 

遺言書があるはずなのに原本が見つからず、あっても内容に問題があるケースなど、遺言書をめぐるトラブルは起こりがちです。

 

被相続人が突然亡くなった場合、遺言書が存在していることがわかっていても、実物が見つからないということがあります。

 

その場合は、実物が見つからなければ、その遺言書には効力がありません。

 

その場合、被相続人の意思が遺産相続に反映されず、相続者の間でトラブルの火種となる可能性が高くなります。

 

遺言書の保管場所は、遺言書の種類によって異なります。下記にその詳細を記します。

 

 

 

・公正証書遺言

 

公証役場で公証人に作成・保管してもらう遺言のことで、原則、公証役場で20年間保管されます。

 

遺言書が見つからない場合は、まず最寄りの公証役場に被相続人の公正証書遺言が保管されていないかを確認しましょう。

 

どこの公証役場に保管されているのかがわからない場合でも、公証役場間で検索ができるようになっています。

 

問い合わせにあたっては、被相続人が死亡した事実と、調査を依頼する相続人との関係がわかる戸籍謄本、顔写真入りの身分証明書などが必要です。

 

 

 

 

・自筆証書遺言

 

保管場所がオープンにされていないと、相続人が手当たり次第に探さなければならないため、とても手間取ります。

 

自筆証書遺言の場合、保管場所をどこにするかは悩ましい問題です。遺言書の場所をオープンにしておくという考え方もありますが、その場合は、相続人全員が納得した遺言書であることが前提と言えるでしょう。

 

そうでない場合、簡単に見つかってしまう保管場所では被相続人が存命中に開封されて読まれたり、改変されたりする可能性がありますし、逆に発見しにくい場所に保管すると、誰も見つけることができないといった事態になりかねません。

 

 

 

遺言の内容が偏っている場合

 

遺産相続では、被相続人の財産は、原則本人の考えで自由に処分できます。

 

ですが、明らかに配分に偏りがある遺言の場合はトラブルになることがあります。

例えば以下のようなケースです。

 

・第三者に遺産を全部渡す旨の記載

・遺留分を無視した遺産分割の内容

 

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という、最低限の相続分があります。

 

例えば、被相続人が、内縁の妻や愛人、認知した子供などに財産を残す遺言を残しており、その配分があまりにも多い場合、他の相続人の遺留分を侵害することになり、トラブルの元となります。

 

上記のトラブルを回避するために、法定相続人の遺留分を侵害しない内容の遺言書を作成することをおすすめします。

 

 

 

2.遺産に不動産が含まれる

 

遺産に不動産が含まれていると、相続トラブルにつながりがちです。

国税庁の2012年度のデータによると、遺産の中で、土地は45%、家屋は5%程度となっており、不動産が遺産の半分以上を占めています。

 

現金や預貯金は、単純に法定相続分に応じて頭割りができるので比較的分けやすいのですが、不動産は簡単に分割できないので法定相続分に応じて頭割りがしづらく、トラブルに発展しがちです。

 

 

不動産の遺産相続でもめごとが起きるのは大きく3つの理由が挙げられます。

 

 

(1)一人だけが相続する

一人の相続人だけが相続する方法です。通常、不動産は高価ですし、相続人が複数いる場合、他の人は相続ができないため不公平が生じます。

 

 

(2)不動産を相続する人が他の相続人に代償金を支払う

不動産を取得する相続人が他の相続人に代償金を支払う方法です(代償分割)。この方法は、不動産を取得する相続人に支払い能力がある場合にしか利用できません。

 

 

(3)不動産を売却して現金で分割する

不動産を売却し、現金化して分ける方法です(換価分割)。この方法だと不動産という資産が失われてしまうため、反対意見が出やすくなります。

 

 

 

不動産相続のベストな対処法は、被相続人が存命中に、相続人ときちんと話し合いをして、その内容を遺言に残すことです。

遺留分を侵害していないきちんとした遺言があると比較的スムーズに遺産分割を進めることができます。

 

 

 

 

3.生前贈与が行われている

 

生前贈与とは、文字どおり被相続人の生前に相続人に対して財産を贈与することです。

 

何が生前贈与に該当し、それをどのように評価するかをめぐって問題になることが多いので注意したいところです。

 

トラブルを避けるためには、あまりにバランスを欠いた生前贈与や不透明な生前贈与はしないことです。

 

贈与をする場合は、すべての相続人に不公平感が出ないよう心がけましょう。

 

また、生前贈与が本当に行われたどうかについて、相続人の間で言い争いになることもよく起こります。そのため、生前贈与を行った際には、贈与契約書などを作成して「誰に」「何を」「いくら」贈与したのかをしっかりと残すようにしましょう。

 

 

 

4.親と同居して介護した寄与分を主張できる人がいるケース

 

被相続人と同居してその介護をしていた相続人がいると、その寄与分をめぐって争うケースが増えます。

 

例えば、親と同居して介護した相続人は「介護で苦労した分、遺産は多めにもらうのが当然」と考える傾向にあります。

 

その一方で、別居していた相続人は同居していた相続人に対し、「親と同居していたのだからタダ同然で親の家に住めるなど金銭面での援助を受けていただろう。その分は相続を減らしてもらいたい」と考える場合もあります。

 

お互いの主張を譲らないでいると、なかなか相続が進まないばかりか、心理的なしこりとなって、精神的に辛い思いをすることになります。寄与分に関するトラブルを避けるために日頃から感謝をして、冷静に話し合いましょう。

 

寄与分に関する相続トラブルを避けるためには、親(被相続者)と同居していた人は兄弟が訪れてくれた時には車代や手土産を用意したり、別居していた人は同居していた人に対し日頃から介護をねぎらい、感謝の気持ちを表すなど、お互いの立場を思いやり、冷静に話し合う態度が必要です。

 

 

 

5.内縁の配偶者がいるケース

 

内縁の配偶者とは、一緒に生活しているなど事実上は婚姻関係にあるものの、婚姻届を届けていないために、法律上では配偶者として認められていない妻・夫のことを意味します。

内縁の配偶者の場合、生活を共にし、被相続人の資産形成に貢献していたとしても、相続権がありません。

そのため内縁の配偶者が亡くなったら、その財産は法定相続人のものになってしまい、生活に困るケースが出てきます。

 

内縁の配偶者に財産を相続させるためには遺言を準備することです。

内縁の配偶者が受ける不利益を避けるためには、遺言を準備することが大切です。

 

遺言によって、内縁の配偶者に不動産や預貯金などを分与することを決めておけば、内縁者のその後の生活を守ることができます。

 

ただ、法定相続人に遺留分減殺請求をされて揉めることのないように、遺留分を除いた相続財産を内縁者に相続させる内容で遺言書を作成することが望ましいでしょう。

 

内縁者が相続できるようにするもう一つの方法は、特別縁故者になることです。

 

特別縁故者になると、被相続人の法定相続人が1人もいず、法定相続人以外の人に財産を譲るという遺言もない場合には、被相続人と生計を同じくしていた人、被相続人の療養看護に務めた人が遺産を相続することができます。

 

ただ、特別縁故者になるためには、家庭裁判所への特別縁故者の申し立てが必要です。

 

申し立ては通常10ヶ月以上かかる相続人不存在が確定してから行います。

なお、申し立てを行っても家庭裁判所が認めない場合は、特別縁故者にはなれません。

 

 

 

6.子供がいない夫婦のケース

 

子供がいない夫婦の場合、法定相続人同士の関係が薄いことが多いため、それがトラブルを引き起こす原因になったりします。

法定相続人には、常に相続人となる「配偶者」と、優先順位によって決まる子・親・兄弟姉妹などがいます。

 

子供がいない夫婦の場合、配偶者と相続順位第2位の親が相続することになります。この際、配偶者と親の仲が良好でない場合は、トラブルに発展しがちです。

 

例えば、親がすでに亡くなっている場合、相続順位第3位の兄弟姉妹が相続人となるので、配偶者と兄弟姉妹が共同相続人となります。

この場合にも、関係によっては争いごとになりますし、そもそも疎遠であることも多く、遺産分割をスムーズに進めにくくなります。

 

さらに、兄弟姉妹も先に亡くなっていたら、代襲相続によって兄弟姉妹の子供たちが共同相続人になりますから、ほとんど会ったこともない甥や姪に遺産を分配せねばならないことになり、配偶者としては納得のいかない相続になりがちです。

 

 

子供がいない夫婦が上記のようなトラブルを避けるためも遺言を準備することが有効です。

親がご存命の場合、親の遺留分を侵害しない内容で配偶者に遺産を残す内容にすれば大丈夫です。

 

兄弟姉妹やその甥や姪(代襲相続人)には遺留分がないので、配偶者と兄弟姉妹(甥姪)が相続人になる場合には、遺産の全部を配偶者に分配する内容にしても問題ありません。

 

 

 

いかがでしたか。

様々な相続トラブルのケースを、具体例を挙げて解説いたしました。

できるだけトラブルが起きないように、事前に対処法を知っておくといざという時に対応しやすくなります。

また、困った時は専門家にご相談されることをお勧めします。