まもなく始まる「相続土地国庫帰属制度」
2023年04月08日
親族や親の土地を相続したものの「遠くに住んでいて利用する予定がない」「周りに迷惑がかからないようにきちんと管理するには経済的な負担がかかる…」などの理由で、相続した土地を手放したい。そう感じたことはありませんか??
そんなときには、その土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月27日から始まります。
今回は、制度の概要や、費用・手続きなどについて詳しく解説していきます。
||土地を相続したときにどうするか||
相続した財産の中に、土地が含まれていた場合の取り扱いに関して、主に2つに分かれます。
1.自分で活用する
相続で取得した土地は、基本的には自分で住んだり、誰かに貸したり、売却するなど、自分で活用の仕方を選ぶことです。
2.相続放棄
相続した土地によっては、活用もできず売却もできない場合があります。土地の管理費や固定資産税の負担を鑑みると、相続放棄をするという選択もありです。
「相続放棄」は、相続の開始があったことを知った日から、3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てて、被相続人の権利や義務を一切受け継がないという手続きです。これを行うと、不要な土地の相続をしないということも可能ですが、注意が必要なのは不要な土地だけでなく、預貯金や株式など、「すべての資産の相続権」も失うこととなり、注意が必要です。
||相続した土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」||
そこでできた制度が「相続土地国庫帰属」です。
これまでは、相続財産に不要な土地があっても、その土地だけを放棄することができず、不要な土地を含めて全てを相続するか、他の資産も含めて全てを相続するかの二択しかありませんでした。
昨今、地方でにおいては土地利用のニーズが低下して、土地を相続したけれどやはり手放したいと考える方が増加傾向にありました。そのため、相続の際に登記がされないまま土地が放置される「所有者不明土地」が発生する要因になっています。
※所有者不明土地に関してはこちらの記事も参考にして見てください。
所有者不明土地の発生の予防策として、相続登記の申請の義務化などとあわせて、相続した土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度が創設されることになりました。
「相続土地国庫帰属制度」は相続または遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡すことができる新しい制度です。
不要な相続土地の処分に困っている方は、この制度の利用も検討の一つに加えてみるのも良いでしょう。
一体、この制度をどんな人が利用できるのか、引き取ってもらうときの要件、費用はいくらなのか、相談先や必要な書類は何か、どうやって申請するのかなどを解説していきます。
||誰が利用できるのか||
相続した土地を国に引き渡す申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人です。
本制度は2023年4月27日からスタートですが、それよりも前に相続した土地でも申請が可能です。
また、兄弟などの複数が相続した共同所有の土地でも申請ができます。その場合は、共有者全員で申請する必要があります。
なお、生前贈与を受けた相続人や、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは、相続や遺贈で土地を取得した相続人ではないため申請は不可です。
||どんな土地だと引き渡せるのか||
相続した土地だったとしても、すべての土地を国に引き渡せるわけではありません。
引き渡すことができない土地の要件に当てはまらない必要があります。
次のような土地は、通常の管理や処分をするにあたって、多くの費用や労力がかかるため、引き取り対象外です。
1.申請の段階で却下となる土地
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
2.該当すると判断された場合に不承認となる土地
・一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用や労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分にあたって過分な費用・労力がかかる土地
以上の項目に該当していなければ、国に引き渡しができるといえます。
||どのくらいの費用か||
申請する際に、一筆の土地あたり、1万4000円の審査手数料の納付が必要です。
さらに、法務局の審査を得て承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。
負担金は、基本的に一筆ごとに20万円となります。面積に関わらず一律ですが、例えば同じ種目の土地が隣接していれば、負担金の合算の申請ができ、ふた筆以上でも負担金は20万円になります。
下記を参考にしてください。
<負担金算定の具体例>
宅地:面積に関わらず20万円
田、畑:面積に関わらず20万円
森林:面積に応じ算定
その他雑種地、原野:面積に関わらず20万円
詳しくは、法務省の「相続土地国庫帰属制度の負担金」をご覧ください。
||手続きの流れ||
相続土地国庫帰属制度を利用し、相続した土地を国に引き渡すための手続きは下記の通りです。
1.法務局へ相談
↓
2.申請書類の作成・提出
↓
3.承認後の負担金の納付
順番に見ていきましょう。
1.法務省へ相談
相談する前に準備するもの
・相続土地国庫帰属相談表を記入
・相談したい土地の状況について(チェックシート)を記入
上記2つは法務省HPに様式を掲載しています。
・土地の状況等が分かる資料や写真を準備
例えば
・登記事項証明書、または登記簿謄本
・法務局で取得した地図、または公図の写し
・法務局で取得した地積測量図
・土地の測量図
・土地の現況や全体がわかる画像、または写真
相談方法は、事前予約制で1回30分です。
事前相談の予約は「法務局手続案内予約サービス」を利用しましょう。
法務局の選び方
承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門で受け付けています。
もしも引き渡したい土地がお住まいの地域から遠方にある場合は、承認申請をする土地が所在する法務局・地方法務局での相談が難しい際は、お近くの法務局・本局でも相談が可能です。
相談ができる人は、土地の所有者だけでなく、家族や親族の方も相談可能です。
2.申請書類の作成・提出
大きく分類すると2種類あります。
◯新たに自分で作成する書類
・承認申請書
・承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
・承認申請に係る土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
・承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
◯用意する書類
・申請者の印鑑証明書
・固定資産税評価額証明書(任意)
・承認申請土地の境界等に関する資料(あれば)
・申請土地に辿り着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
・その他、相談時に提出を求められた資料
3.承認後の負担金の納付
申請した土地について、審査の結果が国が引き取れると判断した場合、帰属の承認の通知とともに、負担金の納付を求める通知が申請者に届きます。
負担金額は、当該通知が到達してから30日以内に納付する必要があります。
負担金が納付されると、その時点で土地の所有権が国に移転します。土地の所有権移転の登記は国が行うので、申請者は登記申請が不要です。
また、30日以内に納付金を納付しなかった場合、国庫貴族の承認の効力が切れるため、失効させてしまった場合は、再び最初から申請し直す必要がありますのでお気を付けください。