相続した不動産を売却する手順・必要書類
2023年04月22日
相続した一戸建ての家や土地、マンションなどの不動産を売却する場合は、名義変更や場合により分割等が必要となります。
また、一般的なマイホーム売却とは利用できる税金の特例が異なり、期限や要件を意識した売却を行うことが必要になります。
今回は一般的には滅多に経験しない不動産の相続に関して、相続した不動産の売却を検討中の方のために、具体的にどうしたら良いのかが分かるように記事を書きます。
これを読めば
・相続した不動産を売却したときの流れや分割方法
・名義変更と必要書類
・相続した不動産を売却する際の注意点
などの基本的な知識を身につけることができます。
||相続した不動産の売却までの流れ||
一戸建ての家やマンション、土地など、相続した不動産売却の流れについて解説していきます。
相続が発生してから、心の整理をするのは大変ですが、家の相続手続きには期限があるため、時を気に掛ける必要があります。
まず、相続してから3ヶ月以内に遺言書の有無、遺産や債務の有無を確認し、遺産となるものを「相続するのか、相続放棄するのか」を決めなくてはいけません。
相続した不動産売却に関する各手続きの期限について、順番にご紹介します。
1.相続の各手続きの期限
相続放棄…プラスの財産もマイナスの負債も全て放棄すること。
期限:相続開始を知った日から3ヶ月以内
限定承認…相続するプラスの財産の限度内でマイナスの負債を相続すること。
期限:相続開始を知った日から3ヶ月以内
準確定申告…被相続人(他界した人)の1月1日から他界したまでの所得を確定申告すること。
期限:相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内
相続税の申告と納税…相続税を申告して納税すること。
期限:相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内
遺産分割協議…相続人同士で遺産の分割方法を決めること。
期限:期限の定めなし
相続した不動産を売却するためには、不動産の名義変更が必要です。遺言書がある場合は、原則として遺言書にしたがって名義変更を行います。
遺言書がなく、かつ特定の相続人に引き継がせたいという場合は、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議には特に期限の定めはありません。
不動産を売却して相続税を納税する場合、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月までに現金化する必要があります。
2.名義変更後→売却までの流れ
遺言書や遺産分割協議を経て相続人が決まったら、名義変更を行います。
相続物件の売却の流れは以下の通りです。
①名義変更
②価格査定
③媒介契約の締結
④売却活動の開始
⑤買付証明書の受領
⑥売買契約の締結
⑦引越し・残金の決済
⑧確定申告
おおよそ、相続物件の名義変更から引き渡しまで、6ヶ月ほどの期間がかかる場合が多いです。
媒介契約からの売却ではなく、業者が直接買取をする場合は、現金化をする期間が大幅に短縮できます。
||相続した不動産の名義変更の必要書類||
相続した土地や一戸建て、ビル、マンションなどの不動産を売るためには名義変更が必要です。
名義変更のための必要書類は下記になります。
法定相続に必要な書類
・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)
遺言による分割
・遺産分割協議書
・遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
・遺言により相続する相続人の住民票
・固定資産税評価証明書
・受遺者の戸籍謄本
・相続関係説明図(任意)
遺産分割協議による分割
・遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)
遺言証書が自筆遺言の場合には、法務局に提出の前に、家庭裁判所で検認を行うことが必要です。
※検認…家庭裁判所による遺言証書の存在および内容の確認のことを指します。
||不動産売却のための必要書類||
相続をした不動産を売るために、売主は物件購入時の重要事項説明書や登記簿謄本、土地測量図などの必要な書類を揃えなくてはなりません。
特に、境界線が確定しない場合、測量をおこなってから売るため、早めに準備しておくことが大切です。
不動産会社に売却を依頼するときに必要な書類は以下の通りです。
・登記簿謄本または登記事項証明書
・売買契約書
・物件購入時の重要事項説明書
・登記済権利書または登記識別情報
・土地測量図、境界確認書(マンションは不要)
・固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
・建物の図面(土地は不要)
・設備の仕様書(土地は不要)
・建築確認済証および検査済証(建物のみ)
・マンションの管理規約または使用細則(マンションのみ)
・マンション維持費関連書類(マンションのみ)
売却後に関することですが、物件購入当時の売買契約書など、購入金額が分かるものがあると、特例を申請して節税になることもあります。不動産売却に必要な書類の中でも、お金に関わる書類は特に取り扱いに注意してください。
必要書類が分からなくなった場合は、契約をする不動産会社が教えてくれるので聞いてみましょう。
||相続した不動産の分割方法||
一戸建てやマンション、土地などの不動産は現金と違って平等に分割することが難しいものなので、分割の仕方に関しても学んでおきましょう。
相続した不動産の分割方法には、「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4種類があります。
1.現物分割
被相続人の現金や車、不動産などの財産を現物でそれぞれの相続人に分ける方法です。
メリット:不動産を単独所有できる
デメリット:法定相続割合で公平に資産を分けるのが難しい
2.換価分割
不動産などの遺産を「売却して得た現金を分割する」方法です。
メリット:法定相続分で公平に分けることができる
デメリット:売却の手間がかかる
3.代償分割
財産を多く相続した相続人が、他の相続人にお金を支払うことで不公平感を調整して分割する方法
メリット:特定の方に不動産を引き継ぐことができる
デメリット:引き継ぐ相続人がポケットマネーから代償金を支払うため、経済的な負担が重い
4.共有分割
遺産を主に法定相続割合で共有する方法
メリット:法定相続分で公平に分けられる
デメリット:放っておくと二次相続、三次相続で所有者が増え、多人数共有物件となり、将来的に売却しにくくなる
これらの特徴がそれぞれにありますが、相続した不動産を売却する場合は、換価分割、もしくは現物分割を選択することが一般的です。
||名義変更の方法||
相続した不動産の売却では、売主を明確にするため名義変更が必要です。予定では2024年4月を目処に義務化されます。
名義変更の義務化は、所有者土地問題を解決するためです。
※こちらも参考に見てください。
1.法定相続
法定相続割合で共有のまま名義変更をすることです。
相続した不動産を売却し、現金を相続人間で公平に分けたい場合には法定相続によって共有名義のまま売却することが適しています。
2.遺言による分割
こちらは遺言書がある場合に行います。その場合は、原則として遺言に従って名義変更を行いますが、遺言とは異なる内容で名義変更したい場合には、遺産分割協議を行う必要があります。
3.遺産分割協議による分割
相続後に相続人間で遺産の分割方法を決める話し合いのことを言います。遺産分割協議は、遺言書がなく法定相続以外の方法で分割したいとき、また遺言書があっても遺言書とは異なる方法で分割したいときに行います。
遺産分割協議を成立させるためには相続人全員の同意が必要です。
||相続した不動産を売却する際の注意点||
1.親切な不動産会社を探す
2.共有名義の売却は所有者全員の同意が必要
3.単独登記型は贈与にならないようにする
4.親の家に住む場合と住まない場合では税金特例が異なる
5.売却期限は3年以内が目安
6.取得費は親の購入額を引き継ぐ
7.所有期間は親の購入日を引き継ぐ
8.取得費が不明の場合は代替資料を探す
上記については、次回の記事で詳しく書いていきます。