相続登記の義務化は2024年4月です!
2024年01月05日
2024年4月1日から、相続登記を義務化することが決定しています。
今回の記事では、相続登記の義務化によって何が変わるのか、不動産の相続登記を放置しておくことによるリスク、また相続登記の手続きと費用相場についてを解説していきます。
なぜ相続登記を義務化することになったのかというと、今まで相続登記は「当事者の任意」になっており、前所有者が亡くなり相続が発生した後に名義変更をしないまま長年放置されている土地=実際の所有者が不明の土地が増えて問題になっていたからです。
法改正後は、相続発生から3年以内の相続登記が義務化され、期限内に相続登記をしなかった人には罰則「10万円以下の過料」が科せられます。
法改正を迎える2024年4月1日より前の現在でも、もしもすでに相続が発生しており、相続登記せずに放置されている不動産がある場合は、義務化の対象になるため、速やかに手続きする必要があります。ご自宅やご実家などの相続登記が完了しているか、確認しておくとよいでしょう。
||相続登記とは||
そもそも相続登記とは、相続によって取得した不動産の登記上の名義を「亡くなった人から相続した人へ変更する手続き」です。
不動産に関する記録は地域ごとの法務局が管理し、登記の手続きも地域の法務局で行う必要があります。
なお、前述したように、すでに相続していて相続登記の手続きはしていない場合でも、義務化・罰則の対象になります。
相続登記をするタイミング
法改正が行われる前までは、義務化されていないため、手続きを行わないでいても罰則はありません。今までは次のようなタイミングで相続登記が行われていました。
・不動産を相続したとき
・相続した不動産を売却するとき
・相続した不動産を担保に融資を受けるとき
それぞれを詳しくみていきましょう。
・不動産を相続したとき
不動産の所有者が亡くなってから、10ヶ月以内で相続登記をするケースが一般的です。
10ヶ月程度で手続きされる方が多い理由としては、以下のようなものがあります。
・相続税申告の期限が10ヶ月以内であるため
・預貯金や有価証券などの相続手続きと同時に行う方が多いため
ですが、このタイミングで手続きせず放置されている不動産も相当ある状態でした。
・相続した不動産を売却するとき
相続した不動産に住んでいない場合、売却したいというケースもあるでしょう。
相続した不動産を売却する場合でも、事前に相続登記により名義変更しておく必要があります。
亡くなった人の名義のままでは売却できません。
・相続した不動産を担保に融資を受けるとき
相続した不動産を担保に、銀行から融資を受けたい場合もあるでしょう。
担保に入れる不動産が亡くなった人の名義のままでは融資を受けることはできません。
融資を受ける人自身の名義に変更する必要があります。
このように、これまで任意のタイミングで相続登記が行われてきましたが、法改正後は「相続発生から3年以内に行う」ことが必要です。
||なぜ相続登記が義務化されるのか||
先に少しお話ししたように、法改正前の相続登記は「任意」であったため相続登記をせず長期間放置され「所有者が判明しない」もしくは「判明しても所有者に連絡がつかない不動産」が年々増えていったのです。
所有者不明の不動産が増加したことで、
・国や自治体が公共用地として買収できない
・災害対策工事が進められない
・不動産の売買ができない、土地活用できない
などの問題が生じました。
このような背景から「所有者不明土地の発生を防ぐための仕組み」を法律において整備する必要が出てきました。
そこで国が2024年4月1日から相続登記を義務化することを閣議決定したのです。
||相続登記が義務化されるとどうなるか||
相続登記が義務化されるとどうなるのか、変更後のポイントについてまとめました。
相続登記の義務化に伴い「手続きの簡略化」や、「事情がある場合の救済措置」も設けられているので把握しておくと良いでしょう。
・期限と罰則の制定がされる
相続人が、相続や遺贈で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の手続きをすることが義務化され、これを怠った場合は10万円以下の過料が課されます。
・登記手続きの一部が簡略化される
これまで遺言によって相続財産の一部の遺贈を受ける場合は、法定相続人全員または遺言執行者の協力なしでは、相続登記の手続きができませんでした。
しかし、相続人全員の関与が必要とすると、かなりの手間がかかりますし、協力しない相続人がいるせいで相続登記の手続きができないケースも生じます。
そこで、法改正後は相続人が遺贈を受ける場合、その人単独で相続登記の手続きができるようになります。
また、法律上の相続割合に応じて相続登記をしたあと、遺産分割によって取り分が変わった場合にも、他の相続人の協力なしに、不動産を取得した人が単独で相続登記の手続きをすることができるようになります。
※相続人以外に対する遺贈は、これまでどおり遺言執行者又は相続人全員の協力が必要
・法改正以前に相続した不動産も対象になる
2024年4月より前(過去)に発生している相続についても義務化の対象です。
例:2010年に相続した不動産について相続登記していない場合
法改正が施行されたとき(2024年4月)から3年以内に相続登記をしなければ罰則の対象
・相続人申告登記が可能になる
万が一、相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらず、相続登記ができない場合、相続人であることを法務局に申告することで、相続登記をする義務を一時的に免れることが可能になります。
相続人であることを報告し、法務局が登記簿に申告者の氏名・住所を記録することで、所有者不明土地を発生させるリスクを低減させることに繋がります。
その後、無事に遺産分割協議がまとまり、実際に不動産の権利を取得した場合には、その日から3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となるので注意が必要です。
・やむを得ない事情があれば罰則を免れるケースも
”やむを得ない事情”として認められるかどうかは法務省の判断になりますが、現時点で法務省が例示しているケースは以下のとおりです。
・複数の相続が発生し、相続人が大人数となり、戸籍謄本などの資料の収集や相続人の把握に時間がかかるケース
・遺言の有効性や遺産の範囲などで争っているケース
・登記申請義務を負っている相続人に重病などの事情があるケース
||相続登記の義務化と合わせて施行される3つの法改正||
相続登記の義務化に伴い、その他にも変更される点がいくつかあります。
大きく変更されるのは、主に以下の3つです。
・住所変更登記の義務化と罰則の制定
いくら相続登記により名義変更されても、その後、住所や氏名の変更があった場合、また所有者が不明になってしまいます。
そのため、相続登記の義務化と合わせて「住所や氏名の変更登記」についても義務化されることになりました。
所有者である個人または法人の氏名(名称)や住所(本店)に変更があった場合、その日から2年以内に変更登記をすることが義務化されます。
これを期限内にしなかった場合は5万円以下の過料が課されます。
なお、住所変更登記についても相続登記と同様、法改正以前の変更も義務化の対象となります。
・法務局が所有者情報の連絡先を把握できるようになる
法改正の施行後、新たに個人が不動産登記を申請する場合には、生年月日、氏名、住所などの情報を法務局に提供されることが義務化されます。
登記簿に記載されるのは氏名と住所だけですが、その情報をもとに、住民基本台帳ネットワークから情報を検索するのに利用されます。
※住所情報を公開しないことも可能で、例えばストーカーやDV被害など、生命や身体に危害が及ぶ恐れがある場合には、登記名義人からの申し出により、法務局から交付される登記事項証明書に住所を記載しないようにすることができます。
・不要な土地を国に返還することが可能になる
相続で土地を取得した場合、その所有権を放棄して土地を国庫へ帰属させることが可能になります。
遺産の中には、相続しても売却が難しい土地や、所有していても利用方法がない土地などもあります。そのような土地を相続してしまうと所有権を放棄できず、孫の代まで固定資産税などを払い続けなければいけなくなってしまいます。
現在の法律では、一部の財産だけ相続放棄することはできません。そのため、相続したくない土地があっても、現預金など相続したい財産があれば相続放棄することはできないのです。
法改正によって、不要な土地だけの相続放棄(所有権放棄)が認められれば、相続時に土地の所有権だけを放棄して、他の遺産は相続するという方法を取ることが可能になります。
不要な土地を国庫に帰属させるためには、国に対して申請し承認してもらう必要があります。
また、建物が建っている土地や境界が明らかでない土地など、承認が受けられないケースもあるので注意しましょう。
||罰則以外で、相続登記をしないでいるリスク||
相続登記をせずに放置することには、罰則以外にも様々なリスクがあります。
・相続人が増え、話し合いが困難になる
相続登記をせずに放置すると、新たな相続が発生することで、世代をまたぎ相続人がどんどん増えてしまいます。
相続登記をする際には、不動産を誰の名義にするかについて遺産分割協議で全員で話し合う必要があります。関係性の薄い人の住所や連絡先を調べ、全員と話し合うのは難しいでしょう。
新たな相続が発生する前に、相続登記しておきましょう。
・相続人の一部が認知症などになり遺産分割協議ができなくなる
相続発生時には元気だった人も、数年後には認知症や大きな病気を患ってしまう可能性があります。
認知症などによって判断能力が低下した人は、遺産分割協議に参加することができないため、成年後見人の選任を申し立てる必要があります。
成年後見人の選任には数ヶ月かかるので、売却など相続登記が必要になったときに迅速に手続きができません。
また、成年後見人を選任すると、裁判所の管理監督下に置かれるため、裁判所への書類提出などが必要になります。
さらに遺産分割協議を前提にして成年後見人を選任するケースでは、司法書士や弁護士などの専門家が選任される確率が高くなり、専門家が選任された場合、毎月2~4万円程度の費用が本人が亡くなるまでかかり続けます。
・相続人と連絡が取れなくなり遺産分割協議が難航する
相続人の一部が行方不明になったり、連絡が取れなくなったりするケースもあります。
その際には、行方不明者に代わる「不在者財産管理人」を選任する必要があります。この手続きも成年後見人と同様、時間と費用がかかりますし、法律で決められた相続分での相続を矯正される可能性があります。
・公的書類が取得できなくなる
公的書類には保管期限が定められています。具体的には以下のとおりです。
・戸籍(除籍):150年
・住民票の除票:5年
・除籍の附票:5年
・改製原戸籍の附票:5年
期限を過ぎても破棄しない役所もありますが、確実とは言えません。
時間が経てば経つほど取得できないリスクが高まり、いざというときに相続登記ができない事態に陥る可能性があります。
・相続持分を売却され、不動産の権利を主張できなくなる可能性がある
遺産分割協議をしていなくても、自身の法定相続分であれば、単独で相続登記をすることができます。
つまり、遺産分割協議や遺言書において、あなたが不動産を単独所有することになっていたとしても、他の相続人が自分に相続持分があるという登記をすることができます。
万が一、他の相続人が怪しい不動産業者等に相続持分を売却し登記されると、権利を主張できなくなるリスクがあります。
これらのリスクを考えると、早めに相続登記をしておいた方が良いでしょう。
||相続登記の手続きと費用||
ここでは大まかに相続登記の手続きの流れと費用について解説します。
1.不動産について情報収集
・固定資産納税通知書
・登記済権利証
・登記簿謄本
これらの資料をもとに、不動産の地番や家屋番号などの必要な情報を集めましょう。
2.戸籍謄本などの必要書類を集める
相続発生の事実や、相続関係の証明をする、戸籍謄本などの書類を集めます。
戸籍謄本は亡くなった人の亡くなった日から出生までさかのぼって集めなければいけません。
3.相続人全員で遺産分割協議を行う
不動産を含めた遺産を「誰が、どのように相続するか」を、相続人全員で話し合います。
遺産分割協議は、直接話し合うだけでなく、メールや電話などで行うのでも問題ありません。
4.申請手続きに必要な書類を作成する
遺産分割協議による相続登記の場合、以下の書類を作成する必要があります。
・相続関係説明図
・登記申請書
・遺産分割協議書
5.法務局へ登記申請をする
収集・作成した書類をまとめ、法務局へ提出します。
申請方法は、法務局の窓口に持参、郵送、オンライン申請の3つがあります。
相続登記にかかる費用については下記の通りです。
・税金
登録免許税
登記申請時に印紙にて納めます。
固定資産税の0.4%
・費用
戸籍謄本等の取得費用
必要書類
・登記事項証明書:不動産1物件につき600円
・戸籍謄本類の発行手数料1通:500~700円程度
・印鑑登録証明書:500円程度
・郵便代:場所により異なる
司法書士への依頼手数料は、相場では5万円〜10万円と言われています。
いかがでしたか。大まかな相続登記の手続きの流れやポイントなどが掴めたでしょうか。
相続登記”義務化”法改正による6つのポイントをまとめると
・相続登記の義務化を含む法改正は2024年4月1日から施行される
・相続発生から3年以内に相続登記をしない場合には10万円以下の過料が科される
・住所変更後、2年以内に不動産登記をしない場合には5万円以下の過料が科される
・法改正以前に所有している不動産の相続登記や住所変更登記についても義務化されるため、速やかに対応する必要がある
・不動産所有者の情報管理をスムーズに行うため、法務局が最新の所有者情報を把握する
・相続した土地を国に渡す(帰属させる)ことが可能になる
以上となります。これを全て理解するのは難しいと思うので、まずは一通り頭に入れた上で、専門家に相談してみることをお勧めします。