認知症患者が所有する不動産の売買について

2023年10月12日

身内が認知症の場合、費用負担が大きく、今後のために不動産売買を検討の方も多いと思います。

認知症である方ご自身は、不動産売買ができるのでしょうか?

今回の記事では、認知症の方の不動産売買について書いていきます。

 

今回の内容は

・認知症の方は不動産売買が可能かどうか

・認知症と委任状の効力について

・不動産所有者が認知症患者の場合に行う売買方法について

をお伝えしていきます。

 

今すぐではなくても、後々も役立てる内容にしていきますので、参考にしていただけると幸いです。

 

 

 

||認知症の方の不動産販売||

 

認知症の方は通常通り不動産売買ができるのでしょうか。

実際は、不動産売買自体は可能ですが、所有者の意思能力次第によっては、契約が無効となる場合があります。

 

民法の規定では以下のように定められています。

 

 

民法3条の2 意思能力
【法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。】

所有者の意思能力が疑わしい場合は、不動産売買は法的効果を持ちません。

意思能力の判断は、裁判所が行いますが、主に判断する要素は下記の通りです。

 

・当事者の年齢

・認知症の程度

・契約の動機、背景

・内容の重要性や難易度

 

当事者の意思能力によって、契約が無効になることも知っておきましょう。

 

 

 

||認知症患者の委任状の効力||

 

委任状を作成すると、本人の代わりに不動産売買の契約が可能です。

 

ここで注意が必要ですが、認知機能が低下している場合は例外で、意思能力が欠如している方の委任状は、代理人が親族でも認められません。

 

ではその場合はどうしたら良いのでしょうか。

認知症の症状が進み、判断能力が低下した場合は、成年後見制度を利用します。

 

下記に詳細を記載します。

 

 

 

||認知症の方の不動産を売買する||

 

成年後見制度とは「判断能力がない人の代わりに契約の締結や財産管理を支援し、保護する制度」です。

意思能力を欠いた方の損害を防ぐことだけが、成年後見制度の目的ではありません。

認知症によって不動産売買の契約が無効になると、買い手がつかないというケースがあります。そこで成年後見人が代理人として取引を行えば、契約が無効になるリスクを免れるのです。

 

そして成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度の2種類があります。

 

 

・任意後見制度

将来のために本人が信頼できる後見人を定める制度です。

認知症などで判断能力が低下する前に設定します。自分が信頼する人を後見人にしたい場合は、任意後見契約を結びます。法務省令で決められた公正証書ですることが必要です。そして内容は、双方の合意で自由に決めることができます。

 

・法定後見制度

一方でこちらは認知症によって判断能力が既に低下している場合に、家庭裁判所が法定後見人を選びます。

判断能力の程度に応じ、後見、補佐、補助のいずれかを家庭裁判所が選任するのです。

 

後見…判断能力なし

補佐…判断能力が著しく不十分

補助…判断能力が不十分

 

それぞれ、権限が異なります。

法定後見制度を利用して成年後見人が不動産売買を行う場合は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に後見開始の申立てを行います。主に法定後見人は親族などを候補者にします。

 

 

 

 

||法定後見制度による認知症患者が行う不動産売却の流れ||

 

手続きの流れは以下になります。

 

・不動産業者との媒介契約

・購入希望者と売買契約

・家庭裁判所へ売却許可決定の申立て

・決済・引き渡し

 

また、裁判所へ提出する「住居用不動産処分許可申立て」に必要な書類は以下の通りです。

 

・申立書

・収入印紙

・郵便切手

・不動産の全部事項証明書

・不動産売買契約書案

・処分する不動産の評価証明書

・不動産会社作成の査定書

 

いくつも書類が必要になりますが、家庭裁判所が確認するポイントは「不動産を売却する必要があるか」「所有者本人や親族の意向に合理性があるか」「所有者本人の生活状況や帰宅先確保の有無」「売却金額」「代金の管理」などです。

認知症患者にとって不都合が起きないかどうかなど総合的に判断をします。

 

 

 

 

||認知症患者が所有する不動産の名義変更||

 

不動産の名義変更では、所有権移転という登記手続きが必要です。これは、手続きを行う際に所有権が変わった原因が必要です。

例えば、親が子に不動産を売却したなど、所有権を変更した原因を登記します。不動産の固定資産税の評価額に対し、登記申請時に登録免許税を納めます。

不動産の売却は適正な時価評価額でないと「みなし贈与」とみなされ、その差異に対し贈与税がかかる場合があるため注意が必要です。

また、不動産の購入金額<売却金額となる場合は、譲渡所得税が課税されます。

 

 

 

認知症患者の所有する不動産売買は、意思能力次第では無効になることや、成年後見制度を利用することなどをお伝えしました。

今後のお役に立てれば幸いです。