農地を売却する方法や税金について
2024年03月28日
農地の売買は、農地法によって制限があります。
農業を引退、農地を相続したが使う予定がないなどの理由で、農地の売却を検討していても、宅地と違って売りにくく困っている方がいます。
農地を使わずに持ち続けていると、維持費や管理をする手間が意外とかかります。
今回は、農地を売却する流れや費用などについて解説します。
||農地の売却が難しい理由||
まずは農地がなぜ売却しにくいのかについて解説します。
農地法による制限
1番の理由としては、「地目が農地のまま購入できるのは、農業委員会に許可を受けた農家」に限定されているためです。
つまり、農業を始めたいから農地を買いたい、という方がいたとしても、すぐにその方に売却ができるわけではありません。
農地の地価の下落
近年、田や畑などの農地の価格が下落し続けていることも要因になっています。
価格が低下し続けている理由としては
・農業への意欲の低下
・農業を新しく始める人や、後継者がいない
・農地の価格に見合う農業収益が得られない
などがあります。
以上の理由で、農地を欲しがる人が減り、なかなか買ってもらえないことから農地価格が下落しています。
使用しない農地は早めに売ることを検討
使わない農地を相続したり所有し続けることによるリスクは、費用面の負担だけでなく以下のような問題も発生します。
・農地として回復するための手間がかかる
・雑草や害虫の被害で近隣に迷惑がかかる
・草刈りなどの労働負担や、業者に依頼すると費用がかかる
このようなリスクを回避するためにも、使わない農地を所有していたり、相続の予定がある方は、早めの売却を検討しましょう。
農地を売却するために
農地を売却するには農地法の許可が必要です。
農地の所有権を他の人に移す場合は、2つの許可の種類があります。
・地目は農地のまま売却
・農地の地目を他に転用して売却
上記のうち、農地を他の用途で使用するために地目を変更することを「農地転用」と言います。
例えば、宅地、雑種地、駐車場などにする場合は農地転用に該当します。
その場合は原則として農地法第5条の許可が必要となります。
市街化区域や、これから市街化していく区域であれば、農業委員会へ届け出ることで売却が可能となります。
転用できない農地の種類
下記のような農地は、農地転用ができないため注意しましょう。
・農用地区域内農地
・甲種農地
・第一種農地
上記がどういう農地なのかというと
・市街化調整区域内にあって、とくに良好な営農条件を備えている農地
・市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域に指定されている農地
・良好な営農条件を備えている農地
などの定義があります。
つまり、耕作条件が良い場所は、簡単に他の目的で使用したり売却できないように定められているのです。
農地を売却する2つの方法
先にも書きましたが、農地を売却する場合は、2つの方法があります。
1.農地のまま売却する
2.農地転用をして売却する
それぞれ、売却の手順を解説します。
1.農地のまま売却する
まずは農地の購入者を探す必要がありますが、地目が農地の土地を購入できるのは「農家」「農業の参入者」に限られます。
農地を売る際、農業委員会の許可よりも先に売買契約を結びます。
なぜなら、売買契約の成立が不透明なままや購入者の詳細が不明な場合に、後々トラブルの元となるためです。
次に、売買契約が成立後、農業委員会に許可申請をします。
農業委員会ごとに、提出書類が異なることがあるため、事前に確認しておきましょう。
許可前に所有権移転請求権の仮登記を申請をします。
仮登記は必須ではないですが、信頼関係を築くために申請することが多いです。
「仮登記」とは、誰が不動産の権利を所有しているのか、その不動産の情報とともに記録する登記を仮で行うことです。
農地の所有権を確実に買主に渡します、という意味を表します。
そして農業委員会が下りたら、本登記となる「所有権移転登記」を行います。
最後に買主から売却費用を受け取り完了です。
2.農地転用をして売却する
農地を転用して売却する際は、まずは不動産会社や不動産買取業者に売却を依頼します。
経験が豊富でノウハウがある業者に相談した方が良い理由は、一般的な売買と違い、農地転用許可の申請や手続き等、複雑な手続きが必要なためです。
次に、許可を得ることを条件に、売買契約を締結します。
農地のまま売却する時と同様に、農業委員会に転売許可の申請をします。
農地転用して売却する際は、農地法第5条の許可を得る必要があります。
そして農地のまま売却するのと同様、仮登記は必須ではありませんが、トラブルを避けるためにも許可前に所有者移転登記の仮登記を行うことも有効です。
最後に、農業委員会から許可が下りたら、本登記と代金の精算を行なって完了となります。
||農地を少しでも高く売却するために||
急いで売却をする必要がなければ、所有してから5年以上経過してから売るというのも手です。
土地などの資産を売却をして得た利益にかかる譲渡取得税は、不動産の所有期間が5年を超えているかどうかで税率が決まります。
・農地を取得して5年以内は、所得税が30%、住民税9%
・農地を取得して5年を超えると、所得税が15%、住民税5%
また、農地をきれいにしておくのも有効です。
農地は定期的な管理が必要で、何もしないでいると雑草が生えてくるほか、その土地に不法投棄などをされてしまうなどのリスクがあります。
不法投棄されたゴミの処分は、その土地の所有者の負担にもなります。
雑草が生えていたり、不法投棄されていたりすると見た目が悪く、買い手が見つかりにくくなります。定期的な農地の管理をすることが大切です。
||農地の売却にかかる税金||
農地を売却したときに所得を得た金額から、売却にかかった諸費用や手数料を差し引いた額が譲渡所得になります。この譲渡所得金額に対して、所得税・住民税・復興特別所得税が課税がされます。
計算式は以下の通りです。
譲渡所得=農地の売却額ー農地の購入額ー諸費用
税額=譲渡所得×税率
※農地の購入額が分からない場合は、農地の売却額の5%を購入額とみなします。
譲渡所得にかかる税率は以下の通りです。
ー所得から5年以内の農地の譲渡所得ー
所得税:30%
住民税:9%
復興特別所得税:0.63%
合計:39.63%
ー所得から5年以上の農地の譲渡所得ー
所得税:15%
住民税:5%
復興特別所得税:0.315%
合計:20.315%
農地を取得してから、5年を超えているかどうかで税率が異なります。
農地の売却には専門知識やさまざまな手続きが必要です。そのため、農地買取の経験が豊富な業者に依頼するケースが多いです。
また、各許可の申請を行政書士に依頼する場合にかかる費用は、
例えば農地転用許可の申請の場合は、市街化区域の場合は約10万円、市街化区域外の場合は約15万円かかります。
まとめると以下のようになります。
・農地の売却には農地法の許可が必要
・農地のまま売るか、もしくは農地転用するかの2つの方法がある
・使わない農地は早めに売却を検討した方が良い
・農地売却で得た利益には税金がかかる
農地の売却は、買い手探しや専門的な知識が必要な手続きがあり、宅地よりも大変で難しいです。
農地売買の経験が豊富で専門性が問われますので、ぜひ一度専門家に相談してみましょう。