2024年以降の住宅ローン減税制度は?
2024年04月26日
2024年以降に住宅ローン減税制度を利用する方は、税制改正により変更点があるため注意が必要です。
特に、新築住宅を購入する方は、2023年以前に入居する場合と、2024年以降に入居する場合で借入限度額や適用要件が大きく変わります。
今回は、住宅ローン減税は2024年以降も受けられるのか、税制改正による変更点、注意点を解説します。
これからマイホームを購入予定で、住宅ローン減税の制度内容や購入するのに適切なタイミングを知りたい方はぜひご一読ください。
||住宅ローン減税の制度とは||
シンプルに言うと、マイホームを購入した際に税負担を軽減できる制度のことです。
住宅ローンを組み、住宅の新築や増改築などをした場合、年末のローン残高の0.7%が所得税から最大13年間控除されます。
所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から控除される仕組みです。
新築住宅と中古住宅でも住宅ローン減税の制度内容が異なります。
借入限度額も新築住宅と中古住宅で異なります。
2024年に入居する場合の借入限度額は下記の通りです。
<控除期間>
新築住宅:13年間
中古住宅:10年間
<借入限度額>
長期優良住宅 新築住宅:4500万円 中古住宅:3000万円
低炭素住宅 新築住宅:4500万円 中古住宅:3000万円
ZEH水準省エネ住宅 新築住宅:3500万円 中古住宅:3000万円
省エネ基準適合住宅 新築住宅:3000万円 中古住宅:3000万円
その他の住宅 新築住宅:0円 中古住宅:3000万円
2024年に省エネ基準に適合しないその他の新築住宅に入居する場合、住宅ローン減税は受けられません。
一方、省エネ基準に適合しないその他の中古住宅に入居する場合は、他の住宅区分より借入限度額が低いものの、引き続き住宅ローン減税を受けられます。
また、住宅ローン減税を受けるためにはいくつか要件を満たす必要があります。
・床面積が50㎡以上
・合計所得が2,000万円以下
・引き渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に居住すること
・ローン返済期間が10年以上
・中古住宅は1982年1月1日以後に建築されたもの、または地震に対する安全性にかかる基準に適合するもの
・買取再販は新築後10年以上経過している、宅地建物取引業者が取得・リフォーム工事・再販売するまでの期間が2年以内
先に、住宅の環境性能による住宅区分を書きましたが、それらについて住宅区分ごとの特徴を詳しく見ていきましょう。
環境性能が高い住宅であるほど、住宅ローン減税の対象となる借入限度額が高くなります。
長期優良住宅
長期優良住宅とは良好な状態で長く使うための措置が講じられた住宅です。
具体的には以下の5つの措置です。
・長期に使用するための構造および設備を有していること
・居住環境等への配慮をおこなっていること
・一定面積以上の住戸面積を有していること
・維持保全の期間、方法を定めていること
・自然災害への配慮をおこなっていること
世代を超えて構造躯体を使えるような劣化対策や、地震による損傷を軽減する耐震性の確保などが求められます。
また省エネルギー性能やバリアフリー性能を高める措置なども必要です。
長期優良住宅の認定を受けるためには、着工前までに申請手続きを行います。
行政庁は申請手続きを受けて、適合しているかどうか審査をして認定します。
認定を受けた後も、維持保全計画に沿った点検や調査・修繕・改良などを実施しなければなりません。
低炭素住宅
二酸化炭素の排出を抑える対策が講じられた住宅です。
2012年施行の都市の低炭素化の促進に関する法律に基づき、所管行政庁が認定します。
低炭素住宅の要件は以下のとおりです。
・省エネ基準を超える省エネ性能を持ち、かつ低炭素化に資する措置を講じていること
・都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
・資金計画が適切なものであること
低炭素住宅は一定の基準を満たす断熱性能と一次エネルギー消費性能があります。
さらに再生可能エネルギー利用設備の導入や低炭素化に資する措置なども必要です。
具体的には、屋根に太陽光発電パネルをつけたり、冷暖房設備を高効率エアコンにしたり、床・壁・天井に高性能グラスウールを設置などの措置が認定時に評価されます。
低炭素住宅の認定手続きでは、まず申請者から審査機関に審査を依頼し、適合証を発行してもらいます。
次に申請者は適合証などを添付し所管行政庁に認定申請書を提出し、認定を受けます。
ZEH水準省エネ住宅
ZEHとはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、ゼッチと呼ばれます。
ZEH水準省エネ住宅は高い断熱性能と高効率な設備システムの導入によって、大幅な省エネルギーを実現しています。
さらに再生可能エネルギーの導入によって自宅でエネルギーを創り出し、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指しています。
ZEHの認定基準は、省エネと断熱だけで一次エネルギー消費量を20%削減していること、再生可能エネルギーを含めて一次エネルギー消費量を100%削減していることなどです。寒冷地や日射量が少ない地域を考慮して認定基準を緩和したNearly ZEHやZEH Orientedなどもあります。
省エネ基準適合住宅
現行の省エネ性能を満たす住宅です。具体的には日本住宅性能表示基準の断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有している住宅が該当します。
国は住宅の省エネルギー対策を強化しており、2025年4月以降は原則すべての建築物で省エネ基準への適合が義務化される予定です。住宅ローン減税においても、2024年から新築住宅の省エネ基準適合を必須要件化しています。
2024年1月1日以降に新築住宅に入居する場合、住宅ローン減税を受けるには省エネ基準適合住宅以上の住宅であることの証明書が必要です。
||住宅ローン減税制度の変更点||
いくつか変更点があります。まとめると下記になります。
・借入限度額が引き下げられる
・その他の住宅は減税を受けられなくなる
・中古住宅は、築年数などの要件が緩和される
借入限度額が引き下げ
2024年以降、すべての住宅区分で借入限度額が引き下げられます。
2022、2023年入居と、2024、2025年入居の借入限度額は以下の通りです。
住宅区分 2022、2023年入居 2024、2025年入居
長期優良住宅 5000万円 4500万円
低炭素住宅 5000万円 4500万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
省エネ基準適合住宅 4500万円 3000万円
その他の住宅 3000万円 0円
さらに、2024年度の税制改正によって、19歳未満の扶養親族を有する子育て世帯と、夫婦のいずれかが40歳未満の若者夫婦世帯の住宅ローン減税が拡充されることになりました。
具体的には2024年1月1日から12月31日までに入居した場合の子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額が、以下のとおり上乗せとなります。
住宅区分 上乗せ額 上乗せ額を反映した借入限度額
長期優良住宅 500万円 4500万円+500万円=5000万円
低炭素住宅 500万円 4500万円+500万円=5000万円
ZEH水準省エネ住宅 1000万円 3500万円+1000万円=4500万円
省エネ基準適合住宅 1000万円 3000万円+1000万円=4000万円
子育て世代や若者夫婦世帯に限り、省エネ基準を満たす新築住宅に入居する場合は、2022、2023年入居と同じ水準の借入限度額を維持できます。
その他の住宅は減税を受けられなくなります。
ですが例外として、2023年12月31日までに建築確認を受けている場合、もしくは登記簿上の建築日が2024年6月30日以前であれば、適用対象です。
適用を受けられた場合、借入限度額は2000万円となり、控除期間も10年と短縮されます。
||2024年以降に住宅を購入するときの注意点||
下記の3つに分けて注意点をお伝えします。
・省エネ基準を満たす住宅を購入する場合
・その他の新築住宅を購入する場合
・中古住宅を購入する場合
省エネ基準を満たす住宅を購入する場合
2024年以降も住宅ローン減税を受けられますが、2022・2023年入居と比べて借入限度額が下がるのが注意点です。
借入限度額の引き下げ額は、環境性能による住宅区分ごとに異なります。
それぞれの借入限度額と予算とのバランスを見て、どこまで環境性能を高めるのか検討しましょう。
また省エネ基準を満たす住宅には、補助金の対象となる可能性があります。住宅ローン減税との併用もできるため、補助金の適用要件などを事前に調べておきましょう。
その他の新築住宅を購入する場合
先述のとおり、省エネ基準を満たさないその他の新築住宅は、2024年以降になると住宅ローン減税を受けられなくなります。
ただし、その他の新築住宅であっても、2023年12月31日までに建築確認を受けている、もしくは登記簿上の建築日が2024年6月30日以前であれば、住宅ローン減税の適用を受けられます。
例えばすでに竣工している建売住宅であれば、2024年以降に入居しても住宅ローン減税を受けられる可能性があります。
いずれにせよ、その他の新築住宅を購入して住宅ローン減税を受けたい方は、早めに購入を決断しなければなりません。スケジュールに余裕を持ってマイホームを手に入れたい方は、省エネ基準を満たす住宅の検討をおすすめします。
中古住宅を購入する場合
中古住宅は、2024年以降も住宅ローン減税の借入限度額が変わりません。
中古住宅は既存住宅のため環境負荷が小さいため借入限度額が据え置きとなっています。
ただし住宅ローン減税の入居期間は2025年末までとなっているため、それまでに物件を見つけ入居する必要があります。
また、中古住宅でも省エネ基準を満たしていたほうがより多くの控除を受けられます。借入限度額は省エネ基準を満たす中古住宅で3,000万円、その他の中古住宅で2,000万円です。物件探しでは、住宅の環境性能を意識して選びましょう。
||2026年以降の住宅ローン減税||
現行の住宅ローン減税は、2025年の入居まで適用されることが決まっていますが、2026年以降に入居する場合も住宅ローン減税を受けられるかどうかは、現時点では未定です。
もし適用期限が引き延ばされたとしても、今より減税効果がアップすることは考えにくいでしょう。もしもマイホームを検討しているのであれば、購入に向けて早めに動き出すことをおすすめします。
いかがでしたか。
住宅ローン減税を利用すると、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できます。
2024年以降に新築住宅に入居して住宅ローン減税を受けたい場合は、省エネ基準を満たすことが要件です。
国は住宅の省エネルギー化を推進しているため、今後はますます環境性能を意識してマイホームを選ぶ視点が必要になるでしょう。
今後に住宅ローン減税の利用を検討している方は、一度ぜひご相談ください。