<2025年版>金利タイプの選び方

2025年01月23日

2024年の日銀の金融政策の金利引き上げにより、住宅ローンの状況に変化が生じています。長らく続いた「低金利時代の常識」のまま住宅ローンを借りると、思わぬリスクを抱え込む可能性も指摘されています。

 

今回は2記事に分け、これからの住宅ローン選びの基礎となる情報をお伝えします。

 

 

 

||住宅ローンを取り巻く状況の変化||

 

2024年の金融機関の動きを振り返ると、春以降、預金金利を引き上げる動きが活発化し、「預金獲得競争」に入りました。

 

例えば、メガバンクの三菱UFJ銀行は、2024年3月にそれまで年0.001%だった普通預金の金利を20倍の年0.02%に引き上げ、さらに12月には年0.1%に引き上げました。

 

ネット銀行のPayPay銀行も、2024年12月、円と米ドルの両方を普通預金に預け入れた場合の金利を年2.0%に設定し話題になっています。

 

このように、今、多くの金融機関が金利を上げ、こぞって預金を獲得しようとしています。

 

 

⚫︎日銀によるマイナス金利解除と追加利上げ

 

銀行が預金の金利を引き上げている背景には、日本銀行(以下、日銀)による、金融政策の転換が関係しています。

 

2024年3月、日銀は「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断」したことを理由として、「マイナス金利政策」を解除しました。

 

政策金利を引き上げるのは実に17年ぶりで、黒田総裁時代に導入された大規模緩和は事実上終了し、金融政策は正常化に向けて動き出しました。

 

その後、日銀は7月末にも追加の利上げを実施し、0.0〜0.1%としていた政策金利を0.25%に引き上げることを決定しました。輸入物価が再び上昇に転じ、物価が上振れるリスクに注意する必要があったのが主な理由としています。

 

 

⚫︎銀行による貸出金利の引き上げ

 

日銀の追加利上げを受け、2024年9月、主要銀行における「短期プライムレート」が、1.475%から1.625%へと0.15%引き上げられました。

 

こちらもおよそ17年ぶりの引き上げです。「短プラ」とは、銀行が信用力の高い企業に1年未満の短期で貸し出す際の基準金利のことで、中小企業向けの融資や、「変動型」の住宅ローン金利の指標となります。

 

銀行は、預金などで集めた資金に「利ざや」を上乗せして貸し出すことで収益を上げます。

 

日銀の動きを受け、高い金利でお金を貸し出せるようになったことで、“元手”となる預金の重要性が増しています。こうした状況が、本章冒頭で紹介したような、預金金利の引き上げにも関係しています。

 

 

⚫︎住宅ローンの金利にもたらす影響

 

こうした金融機関の変化は、住宅ローンにも影響し、借入金利の上昇につながる可能性があります。これから住宅ローンを組もうとしている人は、まず、これを頭に入れておきましょう。

 

住宅ローンは長期間にわたって返済するのが一般的です。年0.1%の利上げでも、35年などの長期の返済の場合、相当の負担増になります。したがって今後は、住宅ローンに関する知識や理解度、そして適切に借り入れるための判断力など、“ローンリテラシー”の向上が求められていると言っても過言ではないでしょう。

 

 

 

 

||住宅ローンの金利の基本||

 

⚫︎「借入金利」と「金利タイプ選び」

 

住宅ローンは、下記の4つの要素で構成されています。

 

①返済期間
②借入金額
③借入金利
④金利タイプ選び

 

いずれの要素にも慎重な判断が求められますが、今、特に注目されているのが、「借入金利」と「金利タイプ選び」ではす。

 

前出のとおり、「金利のある世界」へと回帰し始めたことで、「低金利が続く」という前提では返済プランを立てられなくなっているからです。

 

これらを適切に判断するためにも、借入金利の決まり方や、金利タイプごとの特徴を頭に入れておきましょう。

 

 

⚫︎基準金利が住宅ローンのベース

 

まず、「借入金利」の決まり方から説明します。ひと口に「住宅ローンの金利」と言っても、実際に借りる際に適用される金利は、借り手によって変わります。

 

金融機関の公式サイトなどを見ると、住宅ローンの「基準金利」が掲載されています。これは住宅ローンの「定価」に相当します。各金融機関は市場の金利水準や資金の調達コストなどをふまえ、独自に「基準金利」を設定します。これが、住宅ローン金利の“ベース”になります。

 

 

⚫︎優遇幅は借り手による

 

住宅ローン市場では、多くの金融機関が顧客獲得を競っています。そこで、「基準金利」から一定の金利が差し引かれ、実際に借りる際に適用される金利は「基準金利」よりも低くなることが一般的です。

 

このときに差し引かれる金利の幅を「優遇幅」などと言います。

 

住宅ローン(金銭消費貸借契約)は金融機関と借り手との個別契約です。

そのため「優遇幅」は、借りる人の属性や返済能力、住宅の担保価値などに応じて個別に設定されます。一般的に、信用リスクの高い人ほど優遇幅は小さくなり、信用リスクの低い人ほど優遇幅は大きくなります。

 

 

⚫︎適用金利とは

 

「基準金利」から「優遇幅」を差し引き、住宅ローンを組む際に実際に適用されるのが「適用金利」です。借り手は、この「適用金利」で住宅ローンを組むことになります。

 

注意しておきたいのが「適用金利」の決定日です。

 

多くの金融機関が、「融資実行日」=「住宅の引き渡し日」を「適用金利」の決定日としています。そのため、資金計画を立てた時点での金利と「適用金利」とは必ずしも一致しない可能性があります。

 

例えば、「住宅の引き渡しが1年以上先になる」場合、事前のシミュレーションよりも適用金利が上がる可能性も考えられるのでご注意ください。

 

 

いかがでしたか。

次の記事では、変動金利と固定金利の特徴と、どんな人が向いているかなどをお伝えしていきます。