遺産相続に関する基本的知識を身につけよう

2024年07月29日

遺産トラブルを回避するために、相続に関する基本的な知識を身につける必要があります。

 

今回は、被相続人の定義や相続人との違いなど、遺産相続に関する基本について解説します。

 

相続手続きをスムーズに行うためにも、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

 

||被相続人とは||

 

「被相続人」とは、相続財産を遺し、死亡した人を指します。

 

また、被相続人の財産を相続する権利がある人を「相続人」と言います。

 

「相続財産」は故人が遺した財産を指し、現金や銀行預金、不動産などの「積極財産」だけでなく、借金や買掛金、未払いの税金などの「消極財産」も含まれるため注意が必要です。

 

そして人が亡くなった場合、その故人が有していた一切の権利義務は後述する「相続人」に継承されます。

 

 

また、「相続人」とは、被相続人が遺した相続財産を受け継ぐ人を指します。

相続権を有する人は、民法で明確に定められており、特定のケースを除きその範囲に当てはまらない場合は、相続人としての資格を持ちません。

 

この民法に基づく相続権を持つ人を「法定相続人」と言います。

相続人と法定相続人の違いは、前者は「実際に相続財産を継承する人」、後者は「第一次的に相続する権利を持つ人」ということです。

 

例えば、法定相続人が相続放棄をした場合、その人は法定相続人であっても相続人ではありません。

 

 

 

 

||法定相続人とは||

 

法定相続人となるのは「配偶者相続人」と「最も順位が高い血族相続人」です。

 

配偶者相続人は被相続人の夫もしくは妻を意味し、血族相続人は子や親、あるいは兄弟などを指します。

 

ただし、そのすべてが法定相続人となるのではなく、被相続人との続柄によって相続順位や相続割合が異なります。

 

 

 

相続順位について

 

原則、婚姻関係を結んでいる配偶者は常に法定相続人です。

 

次に配偶者を除いて最も相続順位が高いのが被相続人の子です。

 

血縁関係のある子供は必ず法定相続人となるため、離婚したもと配偶者の子供にも、被相続人との血縁関係がある場合は相続権が発生します。

 

血縁関係がない再婚相手の子供には相続権はありませんが、養子縁組を結んでいる場合は、第一順位の法定相続人となります。

 

第二順位の法定相続人は、被相続人の親で、第三順位は被相続人の兄弟姉妹です。

 

 

 

相続割合について

 

民法で定められており、その割合を「法定相続分」と言います。

原則として配偶者は常に法定相続人となりますが、配偶者の法定相続分は、血族相続人の法定相続分により変動します。

 

第一順位の血族相続人が法定相続人になる場合、配偶者の法定相続分は相続財産の2分の1となり、血族相続人は「相続財産の2分の1を人数で分割した数」が法定相続分です。

 

例:妻と3人の子が相続人の場合

妻は2分の1、残る2分の1を3分割したものが子供1人あたりの法定相続分となります。

 

 

 

遺留分について

 

遺留分は相続人が受け取れる最低限の遺産取得割合であり、遺言よりも強い効力を持ちます。

 

第三順位以外の法定相続人は最低限の遺産取得割合が定められており、これを遺留分と言います。

 

特定の相続人に対して一切の財産を譲らない旨の遺言があった場合でも、遺留分が定められている相続人は、遺留分侵害額請求権の行使により、遺産を多く取得した人に対して侵害額に相当する支払いを請求できます。

 

ただし、遺留分を侵害した遺言が無効になるわけではなく、簡易裁判所や地方裁判所を通じて遺留分侵害額請求訴訟を提起する必要があります。

 

 

 

 

||相続権がない人とは||

 

どこまでの範囲が相続人となるのかは民法で明確に定められていて、原則として下記の人には相続権がありません。

 

 

・離婚した元配偶者

・内縁の妻や夫

・従兄弟

・甥や姪

・血縁関係がなく、養子縁組をしていない再婚相手の子

・配偶者の親族

・血縁関係のない人

・相続放棄した法定相続人

・相続人欠格事由に該当する法定相続人※

 

※相続人欠格事由とは、被相続人の生命を侵害する、詐欺や脅迫によって遺言を作成させる、あるいは遺言書を偽造するなど

 

 

 

 

||相続人の調べ方||

 

被相続人の遺産を相続するために、相続人を確定させることが必要です。

 

被相続人が遺言書を作成していない場合は、被相続人の銀行預金を相続するために「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の印鑑証明書や戸籍謄本などを銀行に提出する必要がありますあ。

 

 

遺産分割協議は相続人全員の参加が必要なため、誰が相続人となるのかを調査する必要があります。

 

そのために、被相続人の出生から死亡までの出生事項や婚姻事項が記された戸籍謄本や、戸籍に記載されている人が誰もいなくなったことを証明する「除籍謄本」、または戸籍法が改正される以前の「原戸籍謄本」などを取得する必要があります。

 

 

 

 

||被相続人の希望を反映する方法||

 

家族の関係性は人によって様々で、財産の相続に関して自分の意思を反映させたい方も多いでしょう。

 

家族間でトラブルがあった場合は、配偶者や子などに自分の財産を遺したくないケースもあるかもしれません。

 

 

被相続人の希望を反映する方法として、4つの方法があります。

 

 

1.遺言書

2.生前贈与

3.家族信託

4.相続排除

 

 

 

1.遺言書

 

遺言書を作成することで、自らの意思を反映させた遺産分割が可能になります。例えば、法的効力のある遺言書に内縁の妻夫に遺産を譲る旨を記載することにより、戸籍法上の婚姻関係がなくとも相続財産の譲与が可能です。

 

ただし、他の相続人の遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額請求権を行使される可能性がある点に注意が必要です。また、遺言書は民法の規定に則って作成された場合のみ法的効力を持つ点にも注意しましょう。

 

 

 

2.生前贈与

 

生前贈与とは、被相続人の存命中に配偶者や子へ財産を渡すことです。

 

財産の受け渡しに関して被相続人の希望を反映させる有効な方法です。ただし、生前贈与の場合でも、相続開始前10年間の贈与分については、遺留分侵害額請求が認められるので注意が必要です。

 

 

 

3.家族信託

 

個人が財産を管理できなくなった場合に備えて、財産の所有権を「財産から利益を受け取る権利」と「財産を管理・運用・処分できる権利」に分け、後者のみを子に渡す契約などを指します。

 

家族信託の契約は委託者の死後にも継続するため、遺言の代用として用いられるケースも増えています。

 

 

 

4.相続排除

 

被相続人へ虐待行為や重大な侮辱を行った法定相続人に対し、遺産を相続する権利を廃除できる制度です。

 

相続廃除は家庭裁判所を通す必要があり、被相続人か遺言執行者が申し立てをします。

 

この制度を利用することで被相続人に暴力や精神的苦痛を与えた人物の相続権を廃除できますが、配偶者や血縁者などが相続廃除の申し立てを行うことはできません。

 

また、被相続人の生命を侵害する、詐欺や強迫によって遺言を作成させることなどがあった場合は、前述した相続欠格事由に該当するため、相続廃除を行わなくても、その相続人は相続権を失います。

 

 

 

いかがでしたか。

遺産分割を円滑に進めるためにも、ぜひ記事を参考にして相続順位や法定相続分、遺留分などについて理解を深めていただければと思います。