遺産分割協議の注意点

2024年11月23日

今回は、相続で揉めないために、不動産の遺産分割協議で注意するべきポイントについて解説していきます。

 

そもそも、遺産分割協議とは何でしょうか。そしてどうしてそれが必要になるのか、というところに関して説明します。

 

 

 

||遺産分割協議とは||

 

ある方が亡くなると、その方の所有している不動産や預貯金、株式、借地権などの権利などは、他の方へ引き継ぐ必要があります。

 

なぜなら、これら財産(遺産)は、亡くなられた方の名義になっているため、名義を変えなければ、他の人が売却したり活用したりすることができないからです。

 

この名義を変える手続きのことを「相続手続き」と言います。そして亡くなられた方は「被相続人」、相続を受ける方を「相続人」と言います。

 

相続は「死亡によって開始する」と民法で規定されているため、被相続人が他界したことで、相続人が遺産を相続することになります。

 

その遺産を「だれに」「どれを」「どのくらい」「どのようにして」分けるかを話し合うことを遺産分割協議と言います。

 

 

 

 

||遺産分割協議が必要なケースとは?||

 

ではどのような場合に遺産分割協議が必要なのでしょうか。

 

有効な遺言書がある場合は、原則としては遺産分割協議は不要です。そのため、有効な遺言書がない場合に、遺産分割協議が必要となります。

なお、有効な遺言書がある場合でも、相続人の間で合意すれば遺産分割協議が可能です。

 

遺産分割協議とは、被相続人の遺産の分け方を話し合うことになるため、相続人が複数人いる場合に該当します。

 

相続人が一人の場合、その方が遺産をすべて引き継ぐため、話し合う余地がないからです。

 

ところで遺言書がある場合、被相続人が遺言書に遺産の分け方を書いていれば、その書き方が有効である場合限定で、遺産を相続人や受遺者に渡すことが可能です。

 

遺言書がある場合でも、遺産分割協議が必要なケースがいくつかあります。

 

・相続人が最低限もらうことのできる割合に満たない場合に、遺産の割合に関しても話し合いが必要になるケース

・遺言書で相続割合のみ記載するケース

・遺言書の方式が民法上の要件を満たしていないケース

 

 

 

||遺産分割協議で注意すべき点||

 

遺産分割協議の進め方や分割方法についての規定はなく、「協議により遺産の全部または一部を分割することができる」点と、「分割にあたり遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮する」というわりと抽象的な分け方の記載がある程度です。

 

ですので、まずは相続人の間で話し合い、進め方や分割方法について決めていかなければなりません。もっとも、分割の按分については、基準となるべき相続割合(法定相続分)があります。

 

 

 

||法定相続分で話し合いがまとまらない場合は?||

 

話し合いがすんなりまとまれば良いですが、法定相続分を上回る相続を主張する人がいたり、特定の遺産をめぐり対立したり、生前贈与をはじめとした特別受益や寄与分を主張する人がいたりする場合などでは、なかなか話し合いがまとまらないこともあります。

 

その場合は弁護士を入れ、それでもまとまらなければ裁判所の手続きを利用します。

遺産分割に関する裁判は「調停手続」「審判手続」とがあります。多くの場合はまず調停手続を利用します。

 

調停では、民間人で構成された調停委員を中心に、間に第三者を入れた話し合いを行います。相続人が互いに協議し譲り合うなどして遺産の分割方法を決めます。

最終的には調停条項にまとめて合意に至ります。

 

仮にそれでも解決しない場合は審判手続をします。審判では裁判官が主体で相続人の主張やこれまでの経緯を踏まえて事情を調べた上で、法定相続分を軸に、遺産分割の内容を裁判官が決定を下します。

この審判に不服がある場合は高等裁判所で審査を、それでも不服がある場合や法令の解釈に違反がある場合は、最高裁判所の判断を仰ぎ確定となります。

 

 

 

||負の財産でも分割するのか||

 

相続ではプラスの財産だけでなく、負債も引き継ぐことになります。そして負債の中でも、借金などは分割可能ですが、相続においては「法律上当然に」分割されます。

つまり、借金などについて「誰が」「どのくらいの割合で」相続するかという点は、遺産分割の対象とはならず、相続人各自の「法定相続分」に応じて分割されます。というのも、借金などの貸主からすると、資金力のない相続人が負債を全て相続されてしまうと非常に不利益を被ることになるからです。

 

もっとも、相続人全員と債権者で合意すれば負債も遺産分割の対象として、相続する人や割合を協議することはできます。

 

 

 

||遺産分割協議の期限はあるか||

 

期限はありません。ただし、遺産分割がまとまらないと、相続財産の預貯金の引き出しや不動産の売買などが進まないため注意が必要です。

また、遺産分割がまとまらないまま特定の相続人が長期に遺産を占有し続ける場合、法律上取得事項が成立してしまうなどの点にも気をつけましょう。

また、相続放棄や遺留分侵害額請求権、相続回復請求権などには期限があります。詳しくは弁護士等の専門家にお問い合わせください。

 

 

 

 

今回は不動産の遺産分割協議に関して注意するポイントなどを詳しく解説しました。

特に不動産の遺産分割協議は、時価や公示地価、路線価、固定資産税評価額などでも評価が分かれるため、対立する可能性もあり揉めるケースも少なくありません。

万が一揉めてしまったり、揉めそうな場合は迷わず専門家へ相談しましょう。