空き家の売却にかかる費用と節約の特例

2022年09月03日

近年では空き家が増えており問題視されています。

なんらかの事情で空き家を所有していても、特に住居としても使用せず気がついたら数年放置したまま、という方も多いかもしれません。

 

将来的に使用予定がある場合は別ですが、使う予定のない空き家は経年劣化が進むため、思い切って売却に踏み切る方も少なくありません。

 

ですが、いざ空き家を売却するとなっても、どのくらいの費用がかかるのか分からない方もいるでしょう。

 

ここでは不動産会社に売却依頼をした場合の、売却時にかかる費用や売却費用を抑えることができる控除や特例について紹介します。

 

使わない空き家を所有している方や、空き家の売却を予定している方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

●費用

 

①仲介手数料

 

空き家の売却を不動産会社に仲介を依頼した場合、売却できれば仲介手数料を支払います。

仲介手手数料は成功報酬のため、売却の仲介を依頼しても成約がなければ支払いは発生しません。

仲介手数料は不動産会社が受け取れる上限額だけ宅地建物取引業法(宅建業法)で決められています。

 

 

□取引額仲介手数料の上限□

 

200万円以下の部分取引額の5%+消費税

200万円を超え、400万円以下の部分取引額の4%+消費税

400万円を超える部分取引額の3%+消費税

 

 

<例>

2,000万円の取引きした場合

2,000万円×0.03+60,000円=66万円(+消費税)

 

 

②解体費用

 

古い空き家を解体し、更地にしてから売却する場合は、建物の解体費用がかかります。

近年になり解体後の資材やゴミの細分化、処理費用の値上げが続いています。

解体費用は建物の大きさや構造によって異なりますが、一般的な木造住宅の場合の相場は、1坪あたり40,000~60,000円程度です。30坪程度の家を解体した場合、120万円から180万円程度かかることになります。

 

さらに、解体時に廃材や不用品が出た場合は処分費用も追加で必要です。ブロック塀、カーポート・駐車場のコンクリートや庭の木や石などを撤去する場合も費用が別途でかかるため、予め解体するものを明確にして、解体業者に見積を出してもらいましょう。

 

また、更地にせず空き家付きのまま売却する場合は、解体費用を買主持ちにする、という引き渡しの方法もあります。

仲介に入る不動産会社の担当者と相談しましょう。

 

 

 

③測量費用

 

古い空き家を解体し、更地にした後に一般的には確定測量を行います。

売買した後に近隣トラブルを避けるため、また実測と登記記録との乖離を避けるために、土地家屋調査士や測量士が中心となり、隣接地所有者を含め立ち合いのうえ境界の確認作業を行い確定測量図を作成します。

 

土地の形や境界ポイントの数、広さや隣接地の所有者数などにより大きく費用も異なります。

近年に確定測量を済ませているのであれば必要ない場合がありますが、確定測量図がない場合や古い場合は必要経費として加算しておく必要があるでしょう。

 

 

 

●税金

空き家の売却でかかる税金を把握しましょう。

 

①印紙税

 

空き家を売却する際、売り手と買い手で売買契約書を作成して契約を締結します。

売買契約書は印紙税の課税対象文書のため、印紙税を納めます。

印紙税は、契約書に記載されている取引額に応じて決まり、印紙税額分の収入印紙を購入し、売買契約書に貼付して消印することで納付します。

 

 

□印紙税の額□

 

取引金額               本則税率   軽減税率

10万円を超える50万円以下の部分     400円 → 200円

50万円を超える100万円以下の部分    1,000円 → 500円

100万円を超える500万円以下の部分   2,000円 → 1,000円

500万円を超える1,000万円以下の部分  10,000円 → 5,000円

1,000万円を超える5,000万円以下の部分 20,000円 → 10,000円

5,000万円を超える1億円以下の部分   60,000円 → 30,000円

1億円を超える5億円以下の部分     10万円 → 60,000円

 

 

 

②登録免許税

 

空き家を売却すると、所有権が売り手から買い手に移ります。

その際に、所有権移転登記手続きが必要で、登録免許税の納付が必要です。

 

ただし、一般的には所有権移転登記手続きの登録免許税は、買い手が負担します。

空き家売却で売り手が負担することが多い登録免許税は、売り手の現住所と登記上の住所が異なる場合です。所有権を移転する前に、住所の変更登記が必要になります。その際の登録免許税は不動産ひとつにつき1,000円のため、空き家の場合は建物と土地で2,000円です。

住所変更の登記変更手続きは自分でも可能ですが、司法書士に依頼するときには別途報酬を支払うことになります。相場額は10,000~20,000円程度です。

 

 

③譲渡所得税

 

空き家を売却して利益が出た場合は、その利益に対して譲渡所得税が課せられます。

ただし、利益すべてに課税されるわけではなく、課税されるのは売却した空き家の取得にかかった費用を差し引いた額に対してです。

また、利益が出なかったり売却で損失が出たりした場合、譲渡所得税は課税されません。

 

譲渡所得税が課税される額の計算式は、次の通りです。

 

課税譲渡所得=売却金額-取得費-譲渡費用

 

取得費には、空き家の購入代金や建築費、購入時の仲介手数料などが含まれます。譲渡費用に含まれるのは、売却した際の仲介手数料や建物解体費用などです。

課税される譲渡所得額が算出されたら、その額に所有期間によって異なる譲渡所得税の税率を乗じます。

 

 

税率は、次の表の通りです。

 

所有期間          所得税の税率  住民税の税率

所有期間5年以下の土地・建物  30.63% + 9%

所有期間5年を超える土地・建物 15.315% + 5%

 

 

 

◯空き家を売却する時に使える特例

 

ここまできて費用や税金ばかりかかる…とげんなりする前に、特例の存在を知っておきましょう。

空き家を売却する際に適用できる特例や控除を知っていれば、売却時期や売却方法などを調整することで税金を抑えることができます。

 

ここでは、空き家の売却時に利用できる特例や控除を説明します。上手に使って、売却にかかるお金を節約しましょう。

 

 

①3000万円特別控除

この特別控除を適用すれば、居住用の家やマンションなどを売却して利益が生じた場合、最高で3,000万円までの控除ができます。

 

譲渡所得税の課税対象となる利益の額が3,000万円以下であれば、譲渡所得税がゼロになるという特例です。

 

※空き家の売却でこの特例を適用するには、住まなくなった日から3年目の年末までに売却が必要です。

 

他にもいくつか下記のような規定があるので確認しておきましょう。

 

・家を取り壊して更地にした場合は、その土地の譲渡契約を取り壊した日から1年以内に締結し、住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること(それまでに、その土地を貸駐車場などに利用していないこと)

・売却した年の前年または前々年に、この特例や買換え特例、譲渡損失の繰越控除を利用していないこと

 

詳しい内容は、国税庁(No.3302:マイホームを売った時の特例)や税務署の窓口などで確認しましょう。

 

 

②マイホームを売ったときの軽減税率の特例

 

この特例は、居住用として使っていた建物を売却した際に、売買が成立した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていれば、譲渡所得税の税率が長期譲渡所得税の税率からさらに軽減されるものです。

 

この特例を適用すると、課税される譲渡所得のうち6,000万円の部分までについては次のようになります。

 

課税される譲渡所得   所得税  住民税 合計税率

6,000万円までの部分  10.21% 4%  14.21%

6,000万円を超える部分 15.315% 5%  20.315%

 

空き家の売却でこの特例を適用するためには、住まなくなった日から3年目の年末までに売却しなければなりません。

ほかにも、次のような要件を満たす必要があります。詳しくは、国税庁のHP(No.3305:マイホームを売ったときの軽減税率の特例)で確認できます。

 

・売った年の1月1日において、所有期間が10年を超えていること

・売却した年の前年または前々年に、この特例を利用していないこと(マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例とは併用可能)

・売主と買主が、親子や夫婦といった特別な関係でないこと。

 

 

③被相続人の居住用財産を売ったときの特例

 

家の所有者が亡くなって空き家になった場合、その空き家を相続した人が相続時から3年が経過する年の末までに売却した場合、譲渡所得から3,000万円が控除されるというものです。

 

先に説明したマイホーム売却時の3,000万円の特別控除と似ていますが、この特例では、複数の相続人で相続した共有不動産を売却した場合、要件を満たせば共有者全員が特別控除を受けることができます。

 

つまり、2人の相続人が共有で家を相続してから売却すると、それぞれが譲渡所得から3,000万円の控除を受けることができるため、控除額は合計6,000万円になるのです。

 

この特例を適用するための要件には、次のようなものがあります。

 

・相続の開始があった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売ること

・売却代金が1億円以下であること

・相続の開始から売却するまでのあいだ、事業や貸付けの用、または居住の用に使われていないこと

・1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物であること

・マンションなどの区分所有建物登記がされている建物でないこと

相続の開始の直前において、亡くなった人(被相続人)以外に居住をしていた人がいなかったこと

 

詳細、適用を検討する際は国税庁のHP(No.3306:被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例)でも確認しましょう。

 

 

◯不動産会社に相談しよう

 

費用や特例を知って、売るだけでも様々な費用がかかるということが理解できたと思います。

まずはご自身が売却を検討している空き家が、どのくらいの費用がかかりいくら程度の控除ができそうかの想定はついたのではないかと思います。

 

具体的な金額については、まずは不動産会社に相談してみましょう。

より空き家の売却方法が明確になり、より行動がしやすくなります。

 

 

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